ダンテ『神曲』地獄編。地獄の門には「汝ら,ここに入るものはいっさいの望みを捨てよ」と書かれている。ワイヤードの果てで,そこにたどり着いたものは,その言葉の意味を知るだろう。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が,ダンテの『神曲』の世界をウェブ上に展開するプロジェクトを進行させている。1枚の絵からダンテの世界の旅をはじめ,順を追って作品を進むこともできるし,ひと足飛びに天国や地獄,煉獄に行くこともできる。ユネスコは,このプロジェクトにより,著作権の切れた作品の存在にウェブが注目することを期待している。
ワイヤードは,どこまで繋がっているのだろうか。リンクをたどり,検索エンジンを通り抜け,もしかしたらワイヤードは,地の果てを飛び越え,天国や地獄,煉獄までをも繋がっているのではないかとも考えるときがある。もしも,終わりというものがない世界であるとしたら,我々はなんとあてのないところで,無秩序にのさばっているものかとも考える。
リアルワールドのいっさいを飲み込み,リアルワールドには存在しないビットの世界が広がり続けるワイヤード。あえてダンテの『神曲』を持ち込まなくても,すでにワイヤードには天国も地獄も煉獄もある(と予感させる)。リンクをたどりにたどって行き着く,ワイヤードの地獄の扉に書かれている文字は,なにかな?
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